Mar 9th, 2017
9.モテるジジイはウインクをする
22日目。巡礼路では早朝から開いているカフェも多い。
朝6時にあるカフェに立ち寄るとファンキーな店員のお姉さんがマフィンをくれた。
「お代?いいよいいよ。巡礼者みんなにあげてるんだからさ」
うわー!そういうRPGみたいの待ってました。
さらに雑談では「日本映画好きよ。ジャッキー・チェンとかね」と。 100点の誤答!
朝からファンタジーな出来事にワクワクしながら歩を進める。
昼過ぎには、おばちゃんが庭に落ちてたという洋ナシをくれた。甘くて美味しい。今朝からのファンタジーに輪をかけて、なにか対人運の上昇を感じながら歩いていると、フランスのおじいちゃんと出会う。
年齢は70。目鼻立ちはキリリとしていて(ちょっとジャン・レノ入っていて)若い頃は相当女の子を泣かせていたとみた。
アルジェリアで生まれ、戦争が始まってフランスに逃げ、イタリアのシシリアに住んでたこともあって、今は義理の姉の孫が日本にいて、いつか日本にも行ってみたいとか。もうそれだけで1冊書けそうな人となり。一緒に歩きながらお互い微妙につたないスペイン語で(彼の母国語はフランス語)話したのは旅や自然や遺跡、食べ物の話題。僕の好きな話題。
そうそう、ひとつ気がついたことがあって、
イケてるおじいちゃんに共通なのは、過去の話をするときには「時代」のことではなく「自分」のことをいう。
つまり冒頭が
「ワシの若い頃は…」ではなくて「若い頃のワシは…」になる。
時代というレンジまで離れると見えないものが、ぐっと近づいて個人のエピソードとして語られるとき、その人が歩いた道の起伏となって現れる。そこには成功や失敗、無茶や内省があって、ときにそれは冒険譚となるでしょう。そういう方が話って面白いじゃないですか。
あとはやっぱり表情。70年人をたらしてきた笑顔とアイコンタクト、ウインクさえ混ぜてくる。女子でなくても参っちまうチャーミングさ。コロコロ変わる表情がシワとして刻まれていくのだろう。僕もバチッとウインクできるジジイを目指すぞ!