より良いデザインをするために。
より充実した人生を送るために。
2012年、ワヴデザインは「働き方すらもデザインしたい」という思いから、11ヶ月働いて1ヶ月休む、という試みを始めました。
詳しくはこちら

Wab Design INC. / ワヴデザイン
WEBをはじめ、印刷物からモーショングラフィックまで制作を手掛けるインディペンデントなデザインスタジオ。
www.wab.cc

Author

茶木 太徳

Hironori Chaki

エンジニア

組込系のプログラマーを経験後、スペインバルセロナに留学。帰国後2010年よりWeb制作に従事。2013年Wab Design INC.入社。


 

アルタミラ博物館に満足して巡礼旅を再開。
同じ街に留まらないのが巡礼者の暗黙のルール。
休日でも次の街へ移動。

正午。丘の上に素朴な教会を見つけ立ち寄る。
地域の小さな教会で地域の人で集まってお祈りしていた。
内装も学校の教室か集会所のような質素な雰囲気だった。

 

そこの教会の神父さんに「ブディスト?」と尋ねられて

 

「ヤオヨローズ的な?
すみません、具体的なのもってないんです。信仰。」

 

と僕が逆信仰告白。
青空の下、教えを説くと書いて「お説教」タイムに突入。

今回のお説教の内容は

1.  カトリックでは動植物や鉱物は神様が作ったもの。
それ以外は人間が作ったもの

2. 神様は空の上にいない。祈りの中にいる
3. 巡礼中は自分から他の巡礼者に親切にしてあげなさい

の3本です。

 

おとぎ話みたいなものから、精神論、実践的な話まで、ひっくるめて、他宗教(無宗教)の僕にカトリックの教えを話すって、すごいじゃないですか。


宗教に限らずだけど「相手の立場に立って話しなさい」とかいうけれど、相手の立場に立つなら、こっちの立場からはなにも言えない、黙るしかないものって多分あるんですよ。

 

そういうとき、それでも自分の立ち位置のままで、相手はそこに建設的な共通点を見出すと信じて話すというのは、なかなかオープンなマインドだなって。


歩み寄れない場合でも、
手を伸ばして握手はできるみたいなことなのかな。

Mar 6th, 2017

6.強行軍

 

 

15日目。前半の日程を終了して総距離の半分にやや足りないので後半開幕38kmの強行軍に打って出ることに。

 

 

水辺のきれいな道で心躍る。

林を抜け、橋を渡り、草原を歩き進む。心地よい道。
インド人の巡礼者と出会った。場所的にも宗教的にもめずらしい。彼は、昨日から巡礼を始めたとかで、ナップサックと次の町の名前のメモだけもって巡礼をするなめっぷり。水くらい持てと、ちょいと先輩風を吹かす。案の定へばって20kmの地点でアルベルゲ(巡礼宿)に留まる彼に別れを告げて先に進む。いろんなタイプの巡礼者がいる。

 

 

海辺の町に入る。坂道の多い街で転げるように港の方へ降りていく。街は賑わい楽しげな雰囲気だけど、地図は後で下った分だけ登らねばならないことを示していて憂鬱になる。坂道貯金が底をつくと港から山へ続く上りのS字カーブが待っていた。

 

 

 

 

上りのS字カーブを登りきった頃には、体力をかなり削られ、水の補充ポイントにも出会わず、疲労困憊。すでに夕方も18:00を過ぎて太陽は西に傾いており木の多い山道は薄暗い。同じ闇でも、未明の闇は明けるけど夕闇は暮れるばかりで心細いもの。午前中はインド人に先輩風吹かせたりしてたのに。

 

 

最後の残光が消える頃、ようやく町に。スーパーで2リットルのアクエリアスを購入し乾きを癒しながらアルベルゲ(巡礼宿)を探す。

 

 

30分ほど彷徨ってやっとみつけたアルベルゲは、宿泊チケットを500m手前のバルに戻って購入しなければならないことが判明。もはや怒ったり悲しんだりの感情が動かなくなって、後でネタにできるかもとへラリと笑って、ややヤバイ精神状態でダメ押しの往復1kmを消化。やっと本日の旅を終えたときにはとっぷりと暮れていた。

 

 

アルベルゲの庭の芝生にぶっ倒れ、
残りのアクエリアスを飲み干してクールダウン。
月が昇ってくるまでの何時間か空を仰ぎながら疲労感の中に「やってやったぞ」という満足感があった。

 

 

うーん旅らしい。ふさわしい。

 

 

 

巡礼は捨てる旅だ(重量的にも精神的にも)よく言われることである。険しい旅に不要なものを持ち歩く余裕はない。それでもなにが必要か不要かは巡礼者が決める。そして巡礼の持ち物選びは、各人のRPGのプレイスタイルのようで楽しい。ここでは巡礼中にお世話になった持ち物を紹介します。

 

 

・グーグルマップ・オフライン

 

旅のカナメ。カナメなのに出発前夜にギリギリ見つけた機能。エンジニアなんだから知っとけって話なんですけど、オンライン時にあらかじめ対象エリアの地図情報だけ取得しておいてGPSで自分の位置を重ねる。GPSはネット接続関係なく動作するので巡礼中でも無料で使える。とにかく紙の地図も持たずの出発だったのでこれがなければ始められなかったし、残り距離がざっくり分かるのも精神的にかなり楽にしてくれていた。

 

 

・ウルトラライトジャケット

 

寒いときはもちろん着られるのだけど、肌が日射耐性を得るまでは日除けに使っていた。両袖を結んで輪にして首にかけて、太陽を向いている肩の側に垂らし、腕を直射日光から守る。軽くて邪魔にならないし気に入っていたので、歩く方角が変わるときは「エスクード・デル・ソル(太陽の盾)!」と叫んで、太陽へ向けて装備を変えるルール。自分を鼓舞するのは一人旅ではとても大事。

 

 

 

 

・ヘッドライト

 

日の出前に使う。町中は街灯がポツポツあるし、月がでていればぼんやり物はみえるのだけれども問題は「森」。空が木々で塞がれると本当の闇が訪れる。スマホのライトが明るいのでそれで済むかと思っていたが、道を照らすには、明るさより、ある程度の距離と光の円のサイズが必要。そして頭に固定できること。手でもつハンドライトは安定した方向を照らし続けるのは意外とホネ。

 

 

・杖

 

「杖〜??こちとらバリバリのヤングだぜ!不要不要!」と思っていたんですが、どうも熟練者が2本使って歩くと、脚への負担が分散されるらしくて足の早い人ほど使っている様子。僕はもってなかったので道中手頃な枝を1本拾って、より手頃な枝を見つけたら交換してとRPG感覚で装備を切り替えていた。これはなかなか楽しい。

 

しかし、ある日の到着後、外に置いておいたらなくなっていた。

こどもが持っていったのだろう。まあ手頃なただの枝だから・・・未練は・・・。

Mar 7th, 2017

7.雨、雨、雨

 

 

17日目。雨。

べラーノ(夏)とオトーニョ(秋)の間の季節をベラーニョと呼ぶ。

 

スポーツショップの店長が教えてくれた。ベラーニョは雨が多い。スポーツショップに入ったのも雨で洗濯できずに靴下が足りないからだった。

 


次の日、18日目。新しい靴下は、すぐぐしゃぐしゃになった。
暴風雨。メガネは打ち付ける雨粒でレンズの用をなさないし、メガネを外しても白い雨しか見えないほど。
雨宿りをしたいが、広い草原の中に雨宿りできる場所はなかった。

 

 

普段より3時間ほど超過して目的の街へ到着する。
アルベルゲはすでに満室。他のホテルを数件当たってみたけど、そちらも満室。小さな街なのだ。ホテルのロビーで少し休憩させてもらって次の行動を決める。普段なら「もういやだ」と叫んでさじを投げるところだけど、さじの投げ先もないので、日が沈む前にさらに次の街へ進む。

 

 

困難に直面したときでさえ、普通はとれる選択肢はいくつかあると思うんですよ。体力、知恵、コネ、カネ、ズル、あきらめ、先延ばしといった、100点でないにしろ抜け道や逃げ道がある。

 

 

でもね、この日の暴風雨はその例外。
選択肢がないときには忍耐しかない。

 

 

でね。ひとつ気づいたのは、忍耐って個人の能力じゃないんですね。
つまり「忍耐」は状況を指す言葉だと思うんですよ。

 

 

「する」ものじゃないし、まして「できる・できない」って話でもない。忍耐の中にただ「いる」。「いざるをえない」。

 

 

街から8km。日が暮れた頃、小さな宿を見つけて逃げ込む。
疲労困憊・体調不良。雨に濡れ続けたのが良くなかったのか、食事は喉を通らず、熱いシャワーを浴びて倒れるようにベッドへ。

 


 

困難は去り忍耐もいつかおわる!
翌朝はめちゃくちゃ寝坊してスタート!ひゃーいい天気!

 


立派な人や優しい人もいいけれど、なりたいのは魅力的な人だ。
そして巡礼中には何人かの魅力的な人に出会った。

 

 

20日目。沿岸の道はここで終わり内陸へ歩みを向ける。
共に歩いてきた海にさようなら。
昼下がりにアルベルゲ(巡礼宿)に到着。
キッチンが充実していたので自炊を。

 

 

 

 

 

長机でひとつ席を開けてその隣で白昼のナンパが始まる。
自転車巡礼の男が別の巡礼者の女の子にアルバムを見せていた。
チャラい男だなーくらいに思って総額2ユーロの昼食をパクついてたのだけど、彼のアルバムは世界中の旅写真で、少年ジャンプほど厚みがあって実に魅力的だった。

 

 

はすめに見ている僕に「ペンもってる?」と聞き、同時に女の子には「今までの中で気に入った写真はどれ?」と聞く。ペンを渡すと女の子が選んだ写真の裏にメッセージと連絡先を書いて渡す。おいおい僕ナンパの片棒を担がさせられてんじゃんか!

 

 

僕、この鮮やかなメソッドに笑ったし、学んだんですよ。
自信持って何かをするにはメソッドを確立しちゃえばいい。
メソッドを確立するには、熱い鉄を何度も何度も打つような反復が必要で、それはとても大変だ。けれど武器をもてば、反復の効果は10倍にも20倍にもなる。

 

 

つまり、武器を持って反復するのがいい。

 


武器は反復の中、打ち続けた鉄から名刀が生まれたり、旅の途中で偶然自分にぴったりの無銘の刀を拾ったりして、手に入るんでしょう。コツコツやって開花する人、関係なさそうなことからヒントを得て開花する人がいるのはそういう理由じゃないかな。

 


師匠は、あ、彼のこと心のなかで師匠って呼んでるんですけど、
師匠はこのあとの巡礼でもちょくちょく見かけては絶対女性と話していたし、手には武器の「アルバム」があった。
反復できるし武器も持ってる師匠は自信をもってナンパしている。

«1234»