Oct 29th, 2014
ママに混じってパパがゆく(前編)
世はイクメンブームである。
これまで仕事に飲みにゴルフにと精を出していた男性たちが、こぞって子育てに精を出しているらしい。
実際のところ、男が子育てに参加するハードルはかなり下がっているようである。どこへ出かけても大抵の男性トイレにはベビーシートやオムツ替えベッドがあるし、男性が育児休暇を取れる会社も増えていると聞く。
ベビー用品メーカーが出産前の夫婦を対象に行うイベントでは、沐浴(お風呂)体験やオムツ替え体験、チャイルドシートの取り付け方教室などが開かれ、男性も気軽に参加できるようになっている。
子どもが生まれる前から「イクメン育成」は始まっているのである。
しかし、周囲ではこんな話も耳にする。
・仕事が忙しいので月に1度程度しか子どもと遊べないんですが、最近子どもがぼくに懐いてくれなくて…結局ママがいいって言って遊んでくれないんです(涙)(営業/28歳)
・こないだ妻が外出して初めて子どもと二人きりになったんですが、子どもが熱を出してしまって…グズる子どもをなだめながら休日診療している小児科を調べてと、てんやわんやでしたよ(デザイナー/31歳)
普段育児をしないパパたちが「一時イクメン」になると、このような悲劇もあるわけである。
うちには1歳半の娘がいるが、現在はヨメさん(専業主婦)に育児のほとんどをお願いしていて、ぼくは週末に一緒に出かけたり遊んだりする程度である。もう少し成長してくれば自我も芽生えてきて、遊び相手も選びたくなってくるであろう。「よし、お父さんが遊んであげよう」と言っても、「お父さんじゃやだ」とお断りされるかもしれないし、それはとても悲しい。
「ここは是非、お父さんで。」と選ばれるようにならねばならぬ。
ぼくは立派なイクメンになるべく、様々な経験を積むことにした。
1歳6ヶ月検診
赤ちゃんには定期検診というのがあり、発育状態のチェックや育児相談などをしてもらえる。
ちょうど夏休みが検診時期にあたっていたので、ぼくも近所の保険福祉センターについていくことにした。
待合ルームでは、すでに数組の親子が集まっている。
1歳6ヶ月検診と言っても満2歳までの受診できるらしく、ちゃんと歩けて親と意思疎通ができるくらい話す子もいれば、コケながら一生懸命に歩いている子もいたりとさまざまである。
絵本片手に部屋中を走りまわってる子、ひたすら床を転がることに熱心な子、母親の膝の上から断固動かない子など、みんなフリーダムで見ていて面白い。
早速うちの娘も放牧してみたが、物怖じしたのか早くも膝の上の人となった。
はじめに栄養士の先生から食事指導があり、続いて歯科検診へと進む。
診察室に入り白衣にマスクの先生を見た瞬間、娘が泣きだした。
どうやら「お注射」と勘違いしているらしい。
「おクチあけるだけだよー」と説得を試みても聞く耳持たずで、必死に逃げようとするばかりである。
しかしそこはさすが百戦錬磨の小児歯科、手慣れた様子で助手の方共々アンパンマンとしょくぱんまんのぬいぐるみを巧みに操って口を開かせ、あっという間に診察してしまった。
ハリウッドの強盗映画ばり、まさに圧巻のスムーズさである。
これは今後に活かさねばなるまい。
ぼくはムービーを撮っていなかったことを悔やんだ。
続いて身体測定の列へと並ぶ。
ここでは身長測定、体重測定、問診を行うのだが、大人のそれとはちょっと違う。
身長測定器はタテ型ではなく寝て測るヨコ型、体重計は深皿の乗ったはかりのような形である。
問診ではみな頭頂部をチェックしている。
この光景、何かに似ているなぁとしばらく考えて思い当たったのは、テレビで見たスイカの出荷であった。
サイズと重さを測り目視で検品して出荷する様子に似ている。
ただしこちらのスイカは出荷せずに持ち帰って、最後まで愛情を込めて育てきってしまうところが、違うと言えばだいぶ違うような気がする。
そんなことを考えているうちに順番がやってきた。
暴れがちな我が子を、先ほど習得したばかりのあやし技で抑え、なんとか測定終了。
身長XXcm、体重XXkgと、平均より大きめではあったが、成長曲線にはかろうじて入っていたので問題無しとのこと。
最後の問診では、
・歩き方チェック(歩き方やバランスの取り方を見る)
・ことばのチェック(呼ばれて反応するか、ものの名前がわかるか等)
・積み木テスト(お手本どおりに積めるか、親に渡せるか)
・からだのチェック(全身の状態を見る、胸やお腹を聴診する、頭蓋骨上部の大泉門という穴の塞がり具合を見る等。最初に見た頭頂部のチェックはこれだった!)
等をして検診終わりとなる。
何か懸念事項があった時に別の部屋へ呼ばれる通称「別室行き」も無く、夫婦ともども胸を撫で下ろしつつ、帰途についたのだった。
- 後編に続く-
Oct 29th, 2014
ママに混じってパパがゆく(後編)
育児サークル
育児サークルなるものがあることはテレビなどでかろうじて知っていた。
母子が輪になって遊んでるようなイメージがあるが、実際何をしているのかはよく分からない。
一方、嫁さんはママ友から育児サークルのお誘いを受けて何度か参加している。
興味があったぼくは嫁さんに聞いてみた。
「育児サークルとは如何なるものや?」
「ママと子どもが手遊びをしたり歌ったり絵本を読んだりする会である」
「それはパパ参加も有りや?」
「以前の会ではパパも参加していた。気になるのならついてくるのが良いであろう」
「ハハー!」
近所の公民館へ着くと、すでに10組ほどが集まっていた。
ぼく以外、ママ率100%である。
もう少しパパ仲間がいるかと思っていたが、世の男性のイクメン化は思ったより進んでいないらしい。
ママさん同士はある程度顔見知りらしく、挨拶や子どもの話をしている。
せっかくなので交流を深めてみようと、隣の若いママさんに話しかけてみた。
「ここ、いつも来てらっしゃるんですか?」
「(少し不審そうにこっちを見)はい…」
「そうなんですね。今日はパパさんが全然…」
「(子どもに)あ、◯◯ちゃんくつ下脱がないでー」
視線と体の方向的に積極的にお話してくれる未来を感じなかったので、寂しく微笑みつつその場をそっと離れた。
しばらくして開会の挨拶があり、まずは手遊びとなった。
トントントントン ひげじいさん
トントントントン こぶじいさん〜
の節で、
トントントントン アンパンマン
トントントントン しょくぱんまん〜
と歌う。
アンパンマンのところではグーの手をほっぺに当て、しょくぱんまんでは親指と人差し指で「てっぽう」にした手を両ほっぺにあてて四角い顔を表すといった感じである。
最近娘がおぼろげながら歌っていたのはこれであったか、と今後のために何度も歌って覚える。
ひげじいさんの歌でアンパンマンの替え歌?という新鮮さも感じつつ、なぜか寂しさを感じるのは自分の世代にはなかった歌だからなのかも知れない。
いくつかの手遊びが終わって、次は元保育士のおばさんを招いての絵本読み聞かせとなった。
本日の絵本は谷川俊太郎作「もこ もこもこ」である。
抽象的な絵と「もこもこ」「ぱく」などの簡単な言葉で展開する絵本で、読めば大ウケ間違い無し、我が家の定番絵本となっている。
ぼくも普段から読み聞かせしていた絵本なので、ここは是非プロの話術を身につけて娘の心を掴みたい。
元保育士(以下、元保)「みなさんこんにちはぁー。きょうはっ、このえほんをっ、よみたいとおもいまぁーす」
一同「(拍手)」
元保「(表紙)もこ もこもこ!」
元保「(p1)もこ!」
ぼく「(…?)」
おかしい…。
元保「(p2)もこもこ!にょき!」
ぼく「(…)」
元保「(p3)もこもこもこ!にょきにょき!」
ぼく「(…抑揚が…ない!)」
保育士数十年のベテランにこういうのも何だが、思いきりヘタである。
この絵本は内容が単純な分、読み方の抑揚で起承転結をつけないと全くおもしろくないのに、おばさんは全て同じ抑揚で読んでしまう。
映画の最初から最後までクライマックスの音楽が流れっぱなしのような感じである。
これでは子どもたちもさぞ困惑しているだろうと見てみると、これがまさかの大ウケであった。
ページをめくるたびにみんな大興奮である。
普段いかに盛り上がりをつけるか腐心していたのに、これだから子どもはつくづく難しい…。
そして保育士数十年はやはりダテではない。
この後おもちゃ遊びと歌で会はお開きとなった。
改めて思うが、このようなサークルに男性が参加するにはやはり勇気が要るなぁと思う。
参加メンバーはママばかりだし、そこでママ友を作るにもまずはママたちと会話を弾ませなければならぬ。
どこそこの小児科がどうしたとか、あそこのカフェは子連れでも入りやすいといったネタを提供できなければ相手にしてもらえぬ。
休日だけ子供の相手をする程度のイクメンには、なかなかハードルが高いようである。
■まとめ
この夏休み、検診や育児サークル、小児科や公園デビューなど様々な経験をした。
娘とも毎日一緒に過ごし、遊びのお相手としてご指名いただけることも多くなった。
近所の小児科の休診日も把握したので、急な熱が出ても病院まではあわてず行けそうである。
イクメンを名乗るにはまだ少し遠慮があるが、イクメンのベンチ入りくらいはできたのではないだろうか。
少なくとも娘との仲はだいぶ深まったはずである。
これまでの成果を確認すべく、ぼくは娘に聞いてみた。
「公園一緒に行くの、お父さんとお母さんどっちがいい?」
「おかあさん!」
その即答に、新人イクメンは寂しく微笑んでベンチを去るのだった。
Oct 29th, 2014
おわりに
長くて短くていような
忙しくてのんびりなような
プライベートなようで仕事のような…
とにもかくにも一ヶ月が終わってしまった。
20歳くらいで社会人になって以来、
初めての長期休暇であった。
旅行からイクメン修行からピザ窯作りまでいろいろとやったが、
とにかく楽しかったことだけは間違いない。
振り返り
さすがに長い休み期間、中ダレがあったのも否めないが、全体的には当初の予定通り、日常のやりたかったことをほぼ片付けられたと思う。
各記事の日程をまとめるとおそらく10日にもならないので、残りは何をやっていたのだと突っ込まれそうだが、地味に下記のようなこともしていた。
・各種支払いのクレジットカード切り替え手続き
書類からオンラインまで全20件くらいを手続き。「いつでもできるけどずっとやらない事ランキング一位」が片付き心底スッキリ。
・親子で夏フェス
妻と毎年行っていた夏フェスに初めての子連れ参加。覚悟はしていたが、ほとんどの時間を遊具スペースですごした、、
・バスルームの鏡のウロコ状水垢落とし
ダイヤモンドパッドという研磨スポンジを使ったら、今までの苦労が信じられないほど落ちて驚愕した。
・小児科付き添い
嫁さんと行ったら「パパさんは外で待っててくださいねー」と言われ問診は見れず。普段から子どもといないと普段の様子が話せないと気づく、、
・家の外壁掃除
高圧洗浄機を使ったらテレビ通販のように本当に綺麗になるので、つい楽しくなりウッドデッキからガレージから子どもの三輪車まで一日中やっていた。
・庭の草刈り
電動グラスバリカンを使ったら手作業の1/100くらいの時間と労力で終わり感動。(ヘタをすると指が飛ぶので子どもがいるところでは注意!)
・グランツーリスモ5三昧
以前パイプで作った自家製コックピットで、夜な夜な世界のアマチュアレーサーとバトルした。
・旧車メンテナンス
ガレージで廃車になっているFIAT Pandaをいつか誰かに譲渡するために一応メンテナンス。
・富士登山
友人たちとの毎年恒例になっている富士登山。今年は最高の天候で、山頂から絶景が見れた。
・テーブル作り
PC用テーブルが欲しかったので、集成材(1000mm × 450mm × 25mm)にニス塗り&研磨をして仕上げた天板にネットで購入した鉄脚(H660mm)を合わせて、unicoあたりで売ってそうなテーブルを自作した。
こうしてみると、本当にいつもの週末にできそうなことばかりである。ただ、実際いつもの週末は買い物や別の予定に追われ、いつまでたってもできなかったりする。
そういったもろもろを一挙に片付けるというコンセプトの「“非”非日常の一ヶ月」夏休みは達成面、充実面において大成功であった。
東海林さだおさんについて
このブログであるが、ぼくの大好きな東海林さだおさんへのオマージュを込めて書いている。
ぼくはもともと小学生のころから文章を読むのも書くもの苦手であった。教科書の話でさえ数ページで飽き、読書感想文はほぼあらすじの説明に終始した。
しかし母親の影響で読んだ東海林さだおさんのエッセイ「ショージ君」シリーズだけは好きだった。
軽妙な語り口に始まり、急に「懊悩」「相剋」といった難しい単語を挟んだと思いきや、ラーメン屋のおろしにんにくやモテるモテないについて語るシュールさが当時のぼくにも面白かった。
(もっとも酒や男女の話は理解まで至らなかったが、、)
それがきっかけとなり本にも慣れ、今では小説なども読むようになったが、書く方はというと相変わらずからっきしダメである。
今読書感想文を書いても、やはりあらすじ紹介に終始するであろう。
そんなぼくが夏休みブログを書くことになってしまった。
今回の夏休みは内容が内容だけに、そのまま書いては本当にただの日記になってしまう。
ろくに文章も書いたことが無いのに、さてどうしたものか…
楽しい夏休みを前に、ぼくは頭を抱えて憂鬱であった。
そんな時思い出したのが、かの「ショージ君」である。
東海林さん風の軽妙さを真似して書けば、日常すぎる日常も面白可笑しく伝えられるかもしれない。
なにしろ東海林さんを読んで育ったぼくである。頭のなかにも東海林印が染み込んでいる自負も多少はあった。
これこそ一筋の光明!一縷の望み!希望の轍!と、とにかくすがることに決めた。
しかし。
その文体のなんと難しいこと…。
ニュアンスや言い回しが少し違うだけど、途端につまらなくなってしまう。
すがると決めたからには何とか最後まで書ききったが、あの軽妙な文体がどこに?というような、東海林さんとは似ても似つかぬ駄文に仕上がってしまった。
本当に、本当に恐縮である。
今更ながら、東海林さんのエッセイはやはり東海林さんしか出せない絶妙なバランスで書かれているのだなぁ、と改めて痛感した。
(あれだけ第一線で支持されている方なのだから一朝一夕で真似できるはずがなかった…)
さいごに
この貴重な夏休みの取得に際し、弊社代表をはじめとした会社メンバーには、相談から業務の調整、サポートまで本当にお世話になりました。
また文体を参考にさせていただいた東海林さだおさん、ピザ窯作りの参考にさせていただいたブログの方々等々、お礼を尽くしても尽くしきれません。
この場を借りて深くお礼を申し上げようと思いますが、最後くらい自分の文体で書くことにチャレンジしてみます。
ではいつものノリで。
「本当にあざますー!」