Oct 29th, 2014
ママに混じってパパがゆく(後編)
育児サークル
育児サークルなるものがあることはテレビなどでかろうじて知っていた。
母子が輪になって遊んでるようなイメージがあるが、実際何をしているのかはよく分からない。
一方、嫁さんはママ友から育児サークルのお誘いを受けて何度か参加している。
興味があったぼくは嫁さんに聞いてみた。
「育児サークルとは如何なるものや?」
「ママと子どもが手遊びをしたり歌ったり絵本を読んだりする会である」
「それはパパ参加も有りや?」
「以前の会ではパパも参加していた。気になるのならついてくるのが良いであろう」
「ハハー!」
近所の公民館へ着くと、すでに10組ほどが集まっていた。
ぼく以外、ママ率100%である。
もう少しパパ仲間がいるかと思っていたが、世の男性のイクメン化は思ったより進んでいないらしい。
ママさん同士はある程度顔見知りらしく、挨拶や子どもの話をしている。
せっかくなので交流を深めてみようと、隣の若いママさんに話しかけてみた。
「ここ、いつも来てらっしゃるんですか?」
「(少し不審そうにこっちを見)はい…」
「そうなんですね。今日はパパさんが全然…」
「(子どもに)あ、◯◯ちゃんくつ下脱がないでー」
視線と体の方向的に積極的にお話してくれる未来を感じなかったので、寂しく微笑みつつその場をそっと離れた。
しばらくして開会の挨拶があり、まずは手遊びとなった。
トントントントン ひげじいさん
トントントントン こぶじいさん〜
の節で、
トントントントン アンパンマン
トントントントン しょくぱんまん〜
と歌う。
アンパンマンのところではグーの手をほっぺに当て、しょくぱんまんでは親指と人差し指で「てっぽう」にした手を両ほっぺにあてて四角い顔を表すといった感じである。
最近娘がおぼろげながら歌っていたのはこれであったか、と今後のために何度も歌って覚える。
ひげじいさんの歌でアンパンマンの替え歌?という新鮮さも感じつつ、なぜか寂しさを感じるのは自分の世代にはなかった歌だからなのかも知れない。
いくつかの手遊びが終わって、次は元保育士のおばさんを招いての絵本読み聞かせとなった。
本日の絵本は谷川俊太郎作「もこ もこもこ」である。
抽象的な絵と「もこもこ」「ぱく」などの簡単な言葉で展開する絵本で、読めば大ウケ間違い無し、我が家の定番絵本となっている。
ぼくも普段から読み聞かせしていた絵本なので、ここは是非プロの話術を身につけて娘の心を掴みたい。
元保育士(以下、元保)「みなさんこんにちはぁー。きょうはっ、このえほんをっ、よみたいとおもいまぁーす」
一同「(拍手)」
元保「(表紙)もこ もこもこ!」
元保「(p1)もこ!」
ぼく「(…?)」
おかしい…。
元保「(p2)もこもこ!にょき!」
ぼく「(…)」
元保「(p3)もこもこもこ!にょきにょき!」
ぼく「(…抑揚が…ない!)」
保育士数十年のベテランにこういうのも何だが、思いきりヘタである。
この絵本は内容が単純な分、読み方の抑揚で起承転結をつけないと全くおもしろくないのに、おばさんは全て同じ抑揚で読んでしまう。
映画の最初から最後までクライマックスの音楽が流れっぱなしのような感じである。
これでは子どもたちもさぞ困惑しているだろうと見てみると、これがまさかの大ウケであった。
ページをめくるたびにみんな大興奮である。
普段いかに盛り上がりをつけるか腐心していたのに、これだから子どもはつくづく難しい…。
そして保育士数十年はやはりダテではない。
この後おもちゃ遊びと歌で会はお開きとなった。
改めて思うが、このようなサークルに男性が参加するにはやはり勇気が要るなぁと思う。
参加メンバーはママばかりだし、そこでママ友を作るにもまずはママたちと会話を弾ませなければならぬ。
どこそこの小児科がどうしたとか、あそこのカフェは子連れでも入りやすいといったネタを提供できなければ相手にしてもらえぬ。
休日だけ子供の相手をする程度のイクメンには、なかなかハードルが高いようである。
■まとめ
この夏休み、検診や育児サークル、小児科や公園デビューなど様々な経験をした。
娘とも毎日一緒に過ごし、遊びのお相手としてご指名いただけることも多くなった。
近所の小児科の休診日も把握したので、急な熱が出ても病院まではあわてず行けそうである。
イクメンを名乗るにはまだ少し遠慮があるが、イクメンのベンチ入りくらいはできたのではないだろうか。
少なくとも娘との仲はだいぶ深まったはずである。
これまでの成果を確認すべく、ぼくは娘に聞いてみた。
「公園一緒に行くの、お父さんとお母さんどっちがいい?」
「おかあさん!」
その即答に、新人イクメンは寂しく微笑んでベンチを去るのだった。